公開日 2026年03月30日
更新日 2026年03月30日
「鞄の専門店ヒロセ」代表、そして「三鷹中央通り商店会」代表理事の広瀬さんにお話しを伺いました
三鷹駅南口の中央通り商店会にある昭和37(1962)年創業の「鞄の専門店ヒロセ」さん。ランドセル職人だった広瀬さんの祖父が昭和10(1935)年に武蔵小山でお店を始め、戦時中の強制疎開による取り壊しなどを経て、昭和37(1962)年に広瀬さんの父が三鷹にお店を構え現在に至ります。幼いころから鞄に囲まれて育った広瀬さん。会社員として働いていましたが、父親が体調を崩したことがきっかけでお店に戻り、家業を継ぎました。
今回は、協同組合三鷹中央通り商店会の代表理事の顔も持つ広瀬さんに、むさしの地域若者サポートステーション(サポステ)の若者がインタビュアーとなってお話を伺いました。

広瀬充弘さんへインタビュー
ヒロセ鞄店さんのホームページを拝見すると“より多くの鞄に触れることが鞄選びの近道”とあるのが印象的ですが、個人店として今の時代を生きていく苦労や工夫、やりがいなどを教えてください。
今はネットにモノが溢れ、メーカーも自社のオンラインショップに力を入れていますが、「実物を見ないと買えない」とお店に足を運んでくださる方がいます。そういった方に「こういうのを探していたんだ」と言っていただける瞬間がやりがいですかね。ネットで探しても見つからなかったものが、たまたまうちの店で見つかるということがたまにあるんですね。売れ筋の商品に特化したほうが効率はいいけれど、それではみんな同じ品ぞろえになってつまらない。1年に一度売れるかどうかという商品が店でじっと“寝ている”時間もあって資金繰りは大変ですが、実はそういう商品こそが、店の魅力だったりするわけですよね。
品揃えについては、男性は洋服が黒や紺とか暗い色になりがちなので、鞄くらいは明るい色を持ってほしい。それで男の人の物でも明るめの色をできるだけ置こうと思っています。うちはどちらかというと男性向けの商品が多いですけど、この街には「買い物カートで重い荷物を運びたい」というご高齢の方も結構いらっしゃいます。そういった方の力になれる品も置いておきたいですし、品揃えはできるだけ幅広く、地域に寄り添ったものにしたいと思っています。
最終的にどこで買うかは別として、まずは「うちの店で実物を見てください」と門戸を広げるというのかな、そういう気持ちだけは持っておこうと思っています。とにかく実際に触って、ファスナーを開け閉めしたり、その感覚は確かめてみてほしいなと。その中で「こういうポイントで選べば間違いないですよ」といった話はできるかなと思います。そうしてこの狭いお店の品揃えの中から「これがいい」と信じて選んでいただければ有難いし、他のお店も見てみたいっていうのもそれはそれでいい。そんなスタンスでいいのかなと思っています。

広瀬さんが代表理事を務めている三鷹中央通り商店会についてお聞きします。商店会は昭和20年代に自然発生し、平成の初めに商店会としては三鷹で唯一の協同組合という形で法人化されたということですが、現在はどのような活動をしていますか。その特徴や課題などがあれば教えてください。
法人化された頃はスタンプ・ポイント活動、ガラポン抽選会などの催事、祭り、まちづくり研究も活発に行われていました。商店会員は120を超えて個人店も多く元気のある時代でした。現在は会員数が70ほどに減り、人手不足や業態の変化で商店会の活動に参加できないお店が増えています。そんな厳しい状況ではありますが、阿波踊りやMマルシェ、スペースあいプラス、緑を増やす活動など(※1)、人の顔が見える賑わいのある商店会であることを示し続けられるように取り組んでいます。
幸いなことに、最近では商店会の外の人たちが、この商店街は面白いということで、知恵を出してくれたり、一緒に活動を支えたりしてくださるようになりました。外部の方々のアイデアは本当に刺激的ですし、これからの商店会にとって非常に良い流れだと感じています。
※1
Mマルシェ:1月と2月を除く毎月第4日曜日に歩行者天国を活かして商店街を「おもてなし散歩道」に変えるイベント。フリーマーケットだけでなくアート・クラフト・パフォーマンスなど文化交流の場にもなっている。
スペースあいプラス:再開発予定のビルの空き店舗を活用し、手作り作家による作品展示・ワークショップなどを行い、子育て世代の交流拠点にもなっている。
緑を増やす活動:グリーンインフラ100プロジェクト。三鷹中央通り周辺でDIYの木製プランター100個を設置・管理し、緑豊かな街並み(百年の森)を目指す地域主導の活動。

地域で活動している人たちからは、「閉鎖的な商店街ではなかなか難しいけれど、中央通り商店会で、広瀬さんと一緒なら形にできる」という声が聞かれます。Mマルシェのような開かれた活動が、地域に新たな活動の輪を広げる、ポジティブな原動力となっているようですね。
結果としてはそうなってきてるかもしれませんが、その過程で、精力的に活動している人々と出会わなければ、例えば街に緑を増やす活動なんかもできていないと思います。幸運なことにそういう人たちと巡り合えたってことですよね。このインタビューもそうですが、関心を持って話を聞いてくださることは有難いです。
今後の商店会の展望や、やっていきたいことなど教えてください。
商店会ですからね、各店が長く商売を続けられるようにしなくてはならないなと思うんですけど、新陳代謝は必要になってきますし、時代とともに業種や売り方も変わっていきます。例えば、チェーンの飲食店は昼も夜も多くの方が利用されていますよね。特にご高齢の方にとっては気分転換の場にもなる。そういったお店は街に必要だと思います。
また、コロナ禍で繁華街が閉まる中、商店街はライフラインを守るために必要なお店を開けていました。お店が開いてるって事は心強いんです。明かりが点いてる事がなによりで。そう考えると、お店というのは単なる物の売り買いの場ではなく、精神的な安心を司る場所なのだと感じます。
自分の欲しい物を自分のお金で買うという行為はとても健康的で豊かなこと。そんな買い物が楽しめる街の土壌を作っていかなきゃいけないから、例えば、再開発で新しくマンションが建つとすれば、1階には若い人が挑戦しやすい手頃な家賃の店舗スペースを設けるとか。それから、週に何度も通いたくなる生活必需品の店や多世代が集えるフードコートのようなものを入れるとか。今の若い世代や、その先の子供や孫たちが幸せに暮らせる環境を、街全体で真剣に考えていく時期にきているのではないでしょうか。

チェーン店じゃなくて個人店だから、店主さんの人柄とかもそうだし、商店街は地域に根差した、人と人との関係性をより大切にされているということですか?
その土地に根差して暮らす人たちの強さはある一方で、どうしても閉鎖的になってしまう側面もあるなと思っていて。だからこそ、野のさん(※2)のように地域の人たちとオープンに関わり、そこから新しいものを広げていく姿には学ぶことが多いですね。「店が地域の居場所になる」というのは、これからの商売の新しいあり方の一つなのかなと思います。そういうお店がどんどん増えるともっといいかもしれない。僕らはそれを見習わなきゃいけないなと思ってます。だからお店の外に出て、いろんな人との関わりを大事にしていかなきゃいけないなと思うんですよね。
※2
野の:地元野菜や伝統的な調味料、食材、日用品等の量り売りと、日替わりカフェを併設した店舗。

若い世代が地域とかかわりを持つために、商店会と一緒にできることはありますか?
実際お店の人たちって自分の商売をやりながらだから、いつも「寄っといで」と器用に声をかけられるわけではありません。だからこそ、まずは既存のイベントに「こんなことができます」と、お手伝いのような形で参加してもらえたら嬉しいですね。そこで顔見知りになり、一緒にできることを見出していければ一番いいなと思います。地域との関わり合いに商店街を選んでもらえるなら、緑を増やす活動や伝統的なお祭り、Mマルシェに参加していただいても面白いかもしれません。だから、難しく考えず、まずは一緒にやりましょう。
私たちも、どう関わらせてもらったらいいかというお話が具体的にできたらいいなと思っていました。
そうですね。何でもいいから「手伝います!」って言って入ってきてくれた方が、しゃべりやすくていいかもしれないですね。祭りだとしたらロープを結んだり、テントを立てたりっていうようなところから少しずつお互いに知りあっていくっていうのかな。その方がしゃべりやすくなってくるよね。

あとがき
この後も、地域の人たちを交えて、三鷹の町についての話で盛り上がりました。広瀬さんのお人柄に触れ、私たち若者も三鷹で何かできたらいいなと思えた、実りあるインタビューでした。
取材協力
インタビュアー
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石毛 萌 三栖直大
若者の就労をサポートする「むさしの地域若者サポートステーション(通称サポステ)」で将来を模索中のふたり。サポステを受託運営するNPO法人文化学習協同ネットワーク(三鷹市)の若者の居場所Linkやコミュニティベーカリー風のすみか(働く練習ができるパン屋さん)にて、仲間づくり、地域づくりを意識しつつ活動中。
